会社情報関連の本を読んだら

とあるマルチ商法の会社が載っていた。
そういえば私に対して勧誘を行ったバカがいたもんだな。


12月のある日、小中学生時代の友人Aから電話がかかってきた。

Aとは10数年以上連絡を取っていなかったが、何かあったのだろうと思い、話を聞い

てみた。


A曰く「内容はまだ言えないけど、すごいビッグニュースがある」

だから私に会いたい、ということらしい。


もうこの時点で「怪しい」と確定した。変な宗教かマルチ商法の勧誘に違いない。

コミケのカタログチェックに勤しんでいた時期だから、相手にせず適当に誤魔化して

断っても良かった。

だが、社会学部出身の性なのか、怪しげな勧誘ならばヲチしてみたいという知的好奇

心が生じたので、Aに会ってみることにした。

勿論、万一に備えて貴重品とかは持って行かなかった。



数日後。

仕事を終えて、某駅でAと会った。

Aは10数年前と比べたら、すっかり垢抜けた風貌になっていた。

茶髪でピアス・ネックレスを身につけているなんて、当時のAを知る人の誰が想像で

きたであろうか。


Aは一緒に来てくれと歩き出した。

小学生時代のことを話しつつ歩いていたが、その時の私はもうすぐナマで怪しい勧誘

をヲチできる! とドキドキワクワク大興奮!


そして私はあるアパートの一室へ案内された。

部屋に這入ると、真っ先に某マルチ業者の段ボール箱を発見した。

マ・ル・チ!マ・ル・チ!

箱のほかには、男女合わせて5人が私を待っていた。

見たところほぼ同世代といった感じだ。女の容姿も悪くない。

この女に「やらないか」と言われたら、「やる!」と応えてしまうかもと思ったくら

いだ。

さて、それじゃあマルチの勧誘を見させて貰おうじゃありませんか!


彼らの扱う商品の説明が始まった。

途中で彼らより格上っぽい人(監視役か?)が1人来て、合計7人が私を囲むような形と

なった。

まずはねーちゃんが、その商品の素晴らしさを実演しながら説明する。

彼らはその説明を聞く度いちいち相槌を打ったり、親切にもカタログを見せてくれる

商品の説明が終わると、何故か彼らは拍手をし始めた。

そして私に感想を聞いてくる。「喜一さんどうだった?」

「うーん、別に(商品を)欲しいとは思わないですね。」と答えた。

いや本当は心の中で大笑いしていたんだけどね。


そして休む間もなく、リーダー格の男がシステムの説明を開始。

わざわざホワイトボードを使って熱心に説明をするのはいいんだが、

それって何処からどう見てもマルチなんだが。

もうコテコテという言葉がぴったり当てはまるくらいのマルチだ。

彼は言った。

「喜一さんはマルチ商法だと思うかもしれないけど、これってネットワークビジネス

なんですよ!」

いや、マルチだから。


そして、約2時間に亘る商品・システムの説明を終えた後の総仕上げとして、部屋にい

た私以外の輩が自分の夢を語りはじめた。

眼をキラキラと輝かせながら、

「働くのは嫌、好きな事だけをやっていたい」

とか、

「これ(彼らの言うネットワークビジネス)でお金持ちになりたい」

とのたまう。

夢ってそんなに軽々しく話せるものなのかしらん。



なるほどね。

対象者を囲んで緊張状態に置き、

休憩を与えずに長時間大量の情報を与え続け、思考能力を低下させ、

夢を語ることで希望に満ち溢れたものであるように思い込ませるわけか。

これってさ、典型的なマインドコントロールのやり方じゃない?


そして最後に私に仲間入りするかどうか訊いてきた。

本当は「残念だけど、お前ら程度が束になっても、私を騙そうなんて無理なんだよ」

と言ってやりたかったけど、もし彼等がキレたら多勢に無勢だから、

「あーこういうの興味ねえから」

と言って私はその部屋を去った。


Aが途中まで見送ると言って、私についてきた。

「また今度会おうよ」

いやもう会いたくありませんってば。

幸い、その後Aからの連絡は無い。


あれから数年たったが、Aは今頃どうなってるのかな?

苦しんでいたとしても、まあ自業自得ってヤツだ。